庄川の猟師が作るサルの民間薬
どんな伝承か
和歌山県西牟婁郡白浜町庄川字小森の長谷瞬造は、林業や農業のかたわら狩猟も続けてきた兼業猟師である。自宅には乾燥させたサルの腿肉が岩塩とともに小さなガラス瓶に入れてあり、取り出すとたまらなく臭かった。服用するときは少量を削り取り、水でうすめてみそ汁に混ぜて飲む。腹痛ならいっぺんに治ると夫人は繰り返した。以前はサルの黒焼きも作り、頭部を壺に入れて練った赤土を厚く塗り、密閉してから蒸し焼きにした。胆も常備し、昭和の末年ごろまでは耳にした人が求めに来たという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
村の奇譚 ― 里の遺風(筒井功・民俗・地誌・2018年(平成30年))
『村の奇譚 ― 里の遺風』は、民俗研究者の筒井功が平成三十年に著した民俗探訪記である。修験の里の石室、石風呂と焼き石湯、山中の贋金づくり、箕作りの集団や天幕部落、岩窟に暮らした非定住民、猿と猟師、氷室と風穴、産屋、墓制、安倍晴明の墓、狐憑きと犬神など、各地の村に残る習俗と伝承を、聞き取りと文献の両面からたどる。全十三章で、昭和三十年前後の高知市での見聞から説き起こし、「おわりに」では別の出版社で刊行が見送られた経緯を記す。