日吉大社のサルを神使とする信仰
どんな伝承か
滋賀県大津市坂本の日吉大社は『古事記』にも名が見える古社で、背後の比叡山を神体山とする古い信仰を基にしているとみられる。「日吉」はもとは「ヒエ」と読んだ。同社ではいつからともなくサルを神の使いとして崇めており、今も広い境内にサルがすみ、社務所の前には飼育舎もある。四月の山王祭と十一月の臨時祭は十世紀に官祭とされ、もとは申の日に行われていたといい、そのころすでにサルと深く結びついていたことがうかがえる。猿まわしの集団がしばしば日吉神社を氏神として祀ったのも、この由来による。サルが軽んじられるようになる前、聖獣として崇める文化があった一例だという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
村の奇譚 ― 里の遺風(筒井功・民俗・地誌・2018年(平成30年))
『村の奇譚 ― 里の遺風』は、民俗研究者の筒井功が平成三十年に著した民俗探訪記である。修験の里の石室、石風呂と焼き石湯、山中の贋金づくり、箕作りの集団や天幕部落、岩窟に暮らした非定住民、猿と猟師、氷室と風穴、産屋、墓制、安倍晴明の墓、狐憑きと犬神など、各地の村に残る習俗と伝承を、聞き取りと文献の両面からたどる。全十三章で、昭和三十年前後の高知市での見聞から説き起こし、「おわりに」では別の出版社で刊行が見送られた経緯を記す。