谷川岳南麓の猟師のカモシカ密猟
どんな伝承か
カモシカは昭和九年に天然記念物、同三十年に特別天然記念物とされたが、かつてはありふれた獲物で、数が減った原因は密猟だった。群馬県みなかみ町の富士新田に住んでいた猟師石倉篤太郎さんは、林業のかたわら猟をし、カモシカもひそかに撃っていたと著者に打ち明けた。肉が高く売れ、炭焼きよりずっと割がよかったうえ、一度も罰せられず、巡査さえ平気で肉を食べていたという。昭和四十年代半ばごろまでのことらしい。クマは仕留めると噂が広まり振る舞いで肉が消えるため丸ごと売ったが、カモシカは人知れず処分できた。売り先は宝川温泉と、「ステバ」と呼んだ六日町の業者だった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
村の奇譚 ― 里の遺風(筒井功・民俗・地誌・2018年(平成30年))
『村の奇譚 ― 里の遺風』は、民俗研究者の筒井功が平成三十年に著した民俗探訪記である。修験の里の石室、石風呂と焼き石湯、山中の贋金づくり、箕作りの集団や天幕部落、岩窟に暮らした非定住民、猿と猟師、氷室と風穴、産屋、墓制、安倍晴明の墓、狐憑きと犬神など、各地の村に残る習俗と伝承を、聞き取りと文献の両面からたどる。全十三章で、昭和三十年前後の高知市での見聞から説き起こし、「おわりに」では別の出版社で刊行が見送られた経緯を記す。