巫女婆さんの生き霊と孤児の父
どんな伝承か
バスの終点近くのよろず屋(配給所)の店先には、巫女婆さんが予言した通り「タコ、イワシ」の黒板があった。店主に尋ねると、タコが届いたのはついさっきで、この辺りには滅多に上がらない品だという。巫女婆さんは子供のない身で以前もらい子をして育てており、その息子の実父を探すため生き霊を呼び出したことがあった。実父は大学生の頃に下宿の女中に手をつけ子を里子に出しており、今は大阪で自転車屋を営んでいた。名簿から突き止めて言伝てを送ると、本人からその話は以前夢に出てきた白衣の婆さんに言われたことがあると驚きの返事が届いたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
山とお化けと自然界(西丸震哉・山岳・怪異エッセイ・1990年(平成2年))
『山とお化けと自然界』は、西丸震哉が旧著三冊を編み直し、一九九〇年に文庫版あとがきを付けた随筆集である。山や湿原の探検、チョウや小動物とのつき合い、酒の話とともに、横尾谷の岩小屋で出会った幽霊、木曾御岳の人魂、亡兄との交信、テレパシー、呪い殺しの実験、雨やみの術など、著者自身の体験した怪異をつづる。生き物・酒・山・兄との交信の四部からなり、あとがきに『未知への足入れ』『山だ原始人だ幽霊だ』『山の動物誌』を元にしたと記す。