庄屋に化けた荒倉の狸と石灯籠
どんな伝承か
土佐の荒倉山には人をだます狸が出ると恐れられていた。弘岡の下の村の庄屋は、本当に化かすか確かめようと、高知へ行く用事にかこつけて夜に出発した。荒倉越えにかかると、猫のような獣が木の葉を体につけ、着物・袴・刀の男、それも庄屋そっくりの姿になった。ついて行くと狸は弘岡の庄屋の家に入り、今戻ったぞと庄屋の声で言い、女房と話して、もう寝ようかと言い出した。怒った庄屋が刀を構えて障子の破れから覗いていると、後ろから庄屋さんと背を叩かれた。気がつくと、自分は荒倉の峠の石灯籠の前に立ってその中を一心に覗いており、もう朝で日が高く昇っていたという。
原典より
土佐の荒倉山には、狸が出て人をたぶらかすというので、付近の者は恐れていた。—— 講座日本風俗史別巻 妖異風俗((講座日本風俗史 別巻)・日本風俗史・民俗) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
講座日本風俗史別巻 妖異風俗((講座日本風俗史 別巻)・日本風俗史・民俗)
『講座日本風俗史別巻 妖異風俗』は、『講座日本風俗史』の別巻として、複数の執筆者が妖しく異様な風俗を論じた巻である。淫祠と性の祭礼、戦後の新興宗教、性にまつわる迷信、妖術・忍術・奇術、憑きものと特殊家系、心霊術と催眠術、異類との婚姻、性と怪異の関わりを、古典の随筆や各地の報告、事件の記録から取り上げる。九つの章に分け、終章「日本妖異風土記」では関東から九州・沖縄までの怪異譚を地方別・県別に掲げる。