おびや許しを頼んだ末の死産
どんな伝承か
妻を死なせた父の悔恨として語られる話である。語り手は四十二歳の商人で、床屋を営んでいた。もとは病があって信心を始めたのではなく、子が生まれる三、四か月前に妻が近所の教所へ参るようになったところ、思いのほか安産で済んだ。その喜びから夫婦はすっかり信心にのめり込み、暮らし向きに見合わぬ寄進を重ねた。二人目のときは館長に相談しておびやのおさづけを受け、身体の苦しいなか教会へも通って安産を待った。ところが月足らずの死産のうえ、妻は三日苦しんだ末に死んだ。親戚には迷信だと責められたが、教長は因縁が深いから本部に伺えと言い、十円を託して待った許しは形ばかりの手紙にすぎなかったという。
原典より
* 生命を蝕む家(生××家)* 逝きし姉に代りて(ひ××みち)* 溺れかけたひ×のみち信者四、暴行危害を蒙つたもの* 不動明王の化身* 心霊会教主の魔手* 人妻の自殺未遂* 非処女の真相* 伏魔殿の女達—— 邪教に迷はされた人々(好村春基・浅野研真ほか編・新興宗教・邪教批判) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
邪教に迷はされた人々(好村春基・浅野研真ほか編・新興宗教・邪教批判)
『邪教に迷はされた人々』は、新興宗教や祈祷・迷信に惑わされて被害を受けた人々の実話を集めた本である。ひとのみち・天理教・大本教などに絡んで、病人が医者から遠ざけられて死んだ話、精神を病んだ話、教主や行者から暴行を受けた話、家庭や財産を失った話を、遺族や民生委員の手記、『大法輪』昭和十一年の誌上報告などから収める。被害を医療妨害・精神障碍・人命・暴行危害・家庭破壊・物質的損害・一家没落・其の他の八類に分けて並べる。