水晶玉で眠らされた娘の受難
どんな伝承か
世田ヶ谷のある家の娘が、身に覚えのないまま操を汚され、病まで感染させられていた。腹痛で母と医師にかかると、男から移る病だと断じられ、十九になって縁談も進んでいた常子には覚えがない。母にいくら責められても否定するほかなく、ついに警察の手を煩わすことになった。真相は思わぬ所にあった。彼女は軽い神経の病で、谷中清水町の袋小路にある行者の家へ数か月通っていたのである。祈祷所に通されると香が漂い、行者は水晶玉を見つめさせた。二十分ほどで記憶は途切れる。行者は催眠に落ちた娘に按摩を施し、深く眠らせてから自らの長い髪と髭をむしり取った。その顔は玄関にいた書生と同じで、一人二役だったのである。
原典より
* 伏魔殿の女達* 水郷の怪行者* 悪行者の罠五、家庭を破壊されたもの* 本門八品浄風教会の掟* 暗い家族(ひ××みち)* 毒牙に斃れた姉(天×教)* 夫に捨てられて半狂乱(生××家)* 守田勘弥の死にまつはる家庭悲劇(…—— 邪教に迷はされた人々(好村春基・浅野研真ほか編・新興宗教・邪教批判) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
邪教に迷はされた人々(好村春基・浅野研真ほか編・新興宗教・邪教批判)
『邪教に迷はされた人々』は、新興宗教や祈祷・迷信に惑わされて被害を受けた人々の実話を集めた本である。ひとのみち・天理教・大本教などに絡んで、病人が医者から遠ざけられて死んだ話、精神を病んだ話、教主や行者から暴行を受けた話、家庭や財産を失った話を、遺族や民生委員の手記、『大法輪』昭和十一年の誌上報告などから収める。被害を医療妨害・精神障碍・人命・暴行危害・家庭破壊・物質的損害・一家没落・其の他の八類に分けて並べる。