豪徳寺駅手前の踏切に立つ三姉妹
どんな伝承か
小田急電鉄の運転手井上昭彦は、七月はじめの夜、新宿から多摩川へ向かう急行の運転台にいた。梅ヶ丘を過ぎて豪徳寺駅にかかろうという辺りで、前方の無人踏切に白いブラウスの人影が三つ、ふわりと動いたように見え、思わず叫んでブレーキを引いた。踏切を十メートルほど行き過ぎて止まり、車輪の下まで探しまわったが誰もいない。車庫で話すと先輩は、昭和二四年の秋にここで小泉幸子と麗子の姉妹が轢かれて即死し、十二年後の春には残る末娘の恵子が結婚を控えて同じ場所で亡くなった、暗い夜には必ず三人そろって出るのだと語った。井上は数日、高熱にうなされたという。遺族の申し入れで信号機と慰霊碑ができてからは、姿を見せなくなった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年))
『日本怪談集 幽霊篇』は、今野圓輔が昭和四十四年に編んだ幽霊体験談の集成である。新聞・雑誌・単行本や民俗の報告、編者自身の採集から、影や物音、人魂、生霊、死の知らせ、皿屋敷、戦死者の霊、船幽霊、タクシーに乗る幽霊など、日本各地の人びとが見聞きした怪異を、作家の創作を除き原文を尊重して再録する。十章に分けて各章の頭に編者の解説と注を置き、巻末に産女や子育て幽霊を論じた「幽霊外伝」と木原浩勝の解説を付す。