大正と現代に残る磯部の一本榎
どんな伝承か
富山県内の怪異を大正期の地元紙の連載と現代のインターネット上の噂とで数量的に比べた調査がある。その結果、二つの時代の双方に姿を見せた怪異はごくわずかだった。数少ない例が、戦国武将佐々成政の愛妾だったという早百合姫にまつわる話である。大正の側では「早百合の亡霊」として、現代の側では磯部の一本榎の怪異として記録され、およそ百年を隔ててなお語られ続けていた。土地の近い話が別の怪異譚に移し替えられている例も、わずかながら認められたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪異の類型と分布の時代変化に関する定量的分析の試み(鈴木晃志郎・于燕楠・E-journal GEO・2020年(令和2年))
『怪異の類型と分布の時代変化に関する定量的分析の試み』は、鈴木晃志郎と于燕楠が著し、二〇二〇年の『E-journal GEO』第十五巻第一号に載った調査報告である。大正期の富山県の新聞連載怪談を再編した『越中怪談紀行』と、ネット上に流布する富山県内の怪談とを比べ、怪異の主体の類型と心霊スポットの分布が約百年でどう変わったかを統計とGISで分析する。研究目的、隣接分野の研究の展望、研究方法、結果と考察の四章に、注と文献表を付す。