履物を脱いで飛ぶ高島平団地
どんな伝承か
東京の自殺の名所は、いまは板橋区の高島平団地になったという。タクシーの運転手の話では、二十歳前後の女がぼんやりした顔で乗り込み、行き先に高島平と告げるとぎくりとさせられる。飛び降りようとする者は高島平で降り、高層の棟へ上がっていく。屋上の鉄条網を越え、靴や履物を脱いでから身を投げるのだという。遠野物語にも、行方知れずになった娘が梨の木の下に草履を脱ぎ置いていたとあり、履物を残す点が重なると説かれている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
妖怪の民俗学――日本の見えない空間(宮田登・宮田登・民俗学・1985年(昭和60年))
『妖怪の民俗学――日本の見えない空間』は、宮田登が一九八五年(昭和六十年)に著した、妖怪の現れる場所を論じた民俗学の書である。柳田国男と井上円了の妖怪論、幽霊と妖怪の違い、口裂け女と産女、皿屋敷、化物屋敷と下女、辻・橋・境の怪異、怪光と怪音、七不思議、通り悪魔と髪切りを、古文献や新聞記事、各地の伝承から読み解く。四章から成り、都市の空間に妖怪が現れる仕組みを軸に据える。