楽屋に響くパタパタという音
どんな伝承か
旅回りの一座が、松川事件のあった町から二つばかり先の駅の、二本松という町のNというオンボロで有名な劇場に出たときのことである。最終日の朝、四時頃だったか、二階の楽屋の障子をパタパタと叩く音がしたかと思うと、すぐにサアッサアッと畳を掃く音がした。背中を水が流れるような妖気がただよい、思わず皆で誰かと怒鳴ると音は消えた。出かけようとするとまたバタバタサアッという音がして、お化けよという叫びに一同が飛び出した。その町の大家の娘が二枚目役者に捨てられ、身重のまま彼のいた楽屋の部屋で自殺したのだという。男が一人でいると必ずこの音がするそうである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・昭和(怪談集成))
日本各地の幽霊・人魂・生霊の実話怪談を十章+幽霊外伝に分類して集成する。