スクールバスの前に立つ亡母
どんな伝承か
昭和五十三年ごろ、新殿小学校で障害児学級を受け持っていた教師の話である。担任していたK子は障害も軽く、気の利くよい子だった。六月のある日、K子の母が過労がもとで亡くなり、姉妹が泣きながら知らせに来た。背をやや丸め、髪はただ束ねただけで、なりふりかまわず働き通した人だったという。それから一年ほど経った日、教師はK子の家の近くまで家庭訪問に行き、帰りに空のスクールバスに乗った。前方の道端に、病院帰りのように顔色の悪い女が小さな手提げをさげて立ち、バスを避けている。顔を上げたその人は確かにK子の母だった。通り過ぎて振り返るともう誰もおらず、運転手は誰も見なかったと答えた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。