滋賀までついてきた針道の父の霊
どんな伝承か
福島の針道に住む利根川優子の伯父が亡くなったときのことである。伯父には男の子ばかり四人あり、三人は近くに住んでいたが、三番目のこうじだけは遠く滋賀県の、器などを創る芸術家の家へ婿養子に行っていた。伯父はそれを不憫がり、いつも可哀想だと言っていたという。その伯父が癌で亡くなり、葬式を済ませたこうじが福島から新幹線を乗り継いで滋賀へ戻るあいだじゅう、火葬にしたはずの父親が悲しそうな顔でずっとついてくる。養家に着いてもそばに立っているので、たまりかねて針道の母親に電話をし、早く成仏するよう拝んでほしいと頼んだ。母親が一心に拝むと、やがて姿は見えなくなったという。
原典より
二年ほど前、五所川原市の近郊を採訪していて、和島秀子さんという四十すぎの主婦から、死んで生き返ったという人の話を聞くことができた。—— 現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。