橋の袂で引き止められた曾祖父
どんな伝承か
大正の初めごろの話である。母方の曾祖父は胃を病んでしばらく床についていたが、あるとき危篤に陥った。枕元の親類縁者は声の限りに名を呼び続けたという。一方、当人はどことも知れぬ所を歩いていた。目の前に大きな川が流れ、そこに橋が架かっている。対岸はたいそうよさそうな所で、ふと気がつくと美しい女たちが自分に向かって手招きをしていた。思わず橋を渡ろうとすると、橋の袂にいた人が、うしろで貴方の名を呼ぶ声が聞こえるから一度戻ってみてはどうか、と声をかけた。そう言われて自分を呼ぶかまびすしい声に気づき、元へ戻ろうとしたとたんに息を吹き返したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。