愛知大学薬師岳大量遭難
どんな伝承か
昭和三十八年、薬師岳で愛知大学山岳部の部員十三人が、考えられないほど異常な道筋をたどってつぎつぎに遭難死した。いわゆる愛知大学山岳部の大量遭難事件である。著者は、リーダー自身が幻覚に陥ったか、ほかの者の幻覚に巻きこまれて判断を誤ったために起きた大量遭難だろうと推しはかる。直前に挙げた南山大学山岳部の冬山遭難では、疲れ果てた部員たちに幻覚が現れて互いにうつりあったが、リーダーだけは終始冷静に仲間の幻覚を疑い、皆が限界に達していると見てビバークを決めるなど、適切な手を打っていた。指揮をとる者の正気が集団の生死を分けることを示す対の例として並べられている。
原典より
その後昭和三十八年、薬師岳において、部員十三人全員が信じられないような異常なコースをとってつぎつぎに遭難死する、…—— 怪談の科学――幻覚の心理を探る(中村希明・中村希明・精神医学) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の科学――幻覚の心理を探る(中村希明・中村希明・精神医学)
『怪談の科学――幻覚の心理を探る』は、中村希明が精神医学の立場から著した怪談の解説書である。新聞記事の幽霊騒ぎや体験談、民話の化かされ話、「浅茅ヶ宿」やハムレット、『四谷怪談』などの古今東西の怪談を取り上げ、その多くを高速道路催眠現象、感覚遮断、飢えや寒冷、睡眠や薬物による幻覚として説明する。生理的幻覚から精神変調時の幻覚までを四章で分析し、第五章「怪談の論理」で恐怖と幻覚の仕組みと日本の幽霊の特色を論じる。