冬山の渓流で泳ぐ裸身の山姫
どんな伝承か
屋久島の湯泊に住む猟師の佐々木吹義は、十二月の初め、腰まで埋まる雪の中を烏帽子岳や高盤岳を越え、島の中央の原生林へ鹿を撃ちに入った。花之江河の手前の小花之江河まで来ると、渓流で若い娘が裸で泳いでいる。人の血を吸うという山姫に違いないと思い、弾を込めて近づくと、娘は撃たないでと言い、高盤岳の山の神にお参りに来た里の者で、身を清めていたのだと答えた。同行を断られて先へ進んだものの気になって引き返すと、姿も足跡もなく、真冬に山へ登った娘など里にはいなかった。翌日も翌々日も探したが、見つからなかったという。
原典より
前方の渓流の中に、ざぶざぶと素裸で、身を躍らして泳いでいる女を発見したからである。—— 現代の怪奇-日本列島のミステリー地帯(鈴江淳也・1970年(昭和45年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代の怪奇-日本列島のミステリー地帯(鈴江淳也・1970年(昭和45年))
『現代の怪奇――日本列島のミステリー地帯』は、鈴江淳也が前著『日本の奇談』に続けてまとめた、現代の超常現象と奇談のレポートである。桑名の「天狗の初さん」、新幹線の亡霊、京都のタクシーに乗る幽霊客、人魂、原因の知れない奇病、念写と三田光一の透視などを、著者の取材・面談と、大正の新聞から昭和四十年代の週刊誌までの記事で集めて収める。五つの部に分け、あとがきは昭和四十五年三月の日付で、巻末に機関誌などを入手できる団体・研究家の一覧を付す。