白木屋の前で見た震災の朝
どんな伝承か
震災の日、著者は血液検査のため白木屋の前にあった中島博士の診療所にいた。寝台に横たわって採血を受けている最中に大きく揺れ、天井の漆喰が一面に落ちてきた。博士は落ちた板に首を挟まれて目を白黒させ、看護婦たちは右往左往するばかりである。著者は自分で注射器を抜き、看護婦を怒鳴りつけて博士を階段から引きずり下ろした。外へ出ると、目の前の五階建ての白木屋百貨店が左右に揺れ、漆喰が砕けて飛ぶ。もうもうたる埃のなかへ、窓から飛んだ女が六、七人、悲鳴をあげて降ってきたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
私の心霊術(長田幹彦・1955年(昭和30年))
『私の心霊術』は、長田幹彦が昭和三十年に著した心霊研究の随筆集である。死後に残る霊や地獄・極楽をめぐる考えを述べ、熊本の家系や安達謙蔵との交わり、東京放送局の文芸顧問だったころの回想、霊友会など戦後の新興宗教への批判、前著『霊界』への反響と自らの信仰を語る。「心霊科学の来世観」「霊界の構造」「ぼくの信仰」などの章からなり、末章「ある霊媒の生態」では霊媒服部との実験とそのトリックの顛末を描く。