妻を斬った旗本屋敷に残る執念
どんな伝承か
東京市京橋区木挽町に、化物屋敷として知られた家があった。もとは黒田という旗本の屋敷で、黒田が妻を袈裟がけに斬り殺したことから、妻の執念が建物そのものに取りついたのだという。それからは誰が住んでも、この家に入った者には不幸が続いた。以前住んでいた神田眼科の博士の一家は死に絶え、近ごろ入居したある会社も大きな損失を立て続けに出して、立ち行かなくなったらしい。大正十二年九月一日の大震災の火事で屋敷は焼け落ち、建物がなくなると同時に、取りついていた念も消えたと語られている。
原典より
黒田といふ旗本が妻を斬り殺し、袈裟にかけたので、其妻の妄執が建物についてゐる。—— 幽霊は語る(梶天真・1938年(昭和13年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幽霊は語る(梶天真・1938年(昭和13年))
『幽霊は語る』は、梶天真が編んだ幽霊譚と幽霊論の集成で、昭和十三年に文明社から出た。新聞・雑誌の記事や井上円了・柳田國男・高峰博らの所説、古典の文を出典を添えて引き、葬送の習俗や布哇の霊魂観から説く幽霊思想、幻覚や網膜による説明、乃木大将が見た我が子の幽霊などの実話を集める。三篇に分かれ、第二篇は男女の幽霊・怨霊・生霊・小児の見た幽霊・前知らせなど八項、第三篇は幽霊写真・化物屋敷・霊界通信を扱い、巻末を夕張と筑前の幽霊問答で結ぶ。