白木屋の窓から降ってきた女たち
どんな伝承か
震災の当日、著者が診療所から表へ逃れると、目の前に建つ白木屋百貨店の五階建てが左右に身震いするように揺れていた。漆喰が砕けて飛び散り、辺りは土煙で何も見えない。そこへ悲鳴とともに、女が六、七人まとめて空から降ってきた。度を失って窓から飛び出したものらしい。路上に平たく伸びた姿がはっきり見えたが、駆け寄って様子を確かめるだけの余裕は誰にもなかった。揺り返しは何度も来て、線路の上では足をさらわれて立っていられないほどだったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
私の心霊術(長田幹彦・1955年(昭和30年))
『私の心霊術』は、長田幹彦が昭和三十年に著した心霊研究の随筆集である。死後に残る霊や地獄・極楽をめぐる考えを述べ、熊本の家系や安達謙蔵との交わり、東京放送局の文芸顧問だったころの回想、霊友会など戦後の新興宗教への批判、前著『霊界』への反響と自らの信仰を語る。「心霊科学の来世観」「霊界の構造」「ぼくの信仰」などの章からなり、末章「ある霊媒の生態」では霊媒服部との実験とそのトリックの顛末を描く。