水越の洗堰で唐鍬に化けた狸
どんな伝承か
勝浦郡小松島町の大字芝生と大字新居見との間を流れる小川に洗堰が設けられており、そこを俗に水越といって、上には舟の古板を利用した橋が架けられていた。ここに住む狸は、よく鋤や鍬などの農具に化けて百姓たちを騙した。ある時、芝生の何兵衛という男が畑からの帰りがけに水越の辺を通りかかると、路端に一挺の唐鍬が落ちている。誰かの忘れ物か、隣の作男が置いたのかと、畑の畔に腰を下ろして一服し、その吸殻を足元に横たわる唐鍬の上へ叩き落とした。吸殻がなお煙を立てていると、不意に唐鍬が動き出し、たちまち狸の正体を現して逃げ去ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
阿波の狸の話(笠井)
『阿波の狸の話』は、脇町の笠井という著者が、阿波国の各地に伝わる狸の話を集めて書いた本である。狸同士の化かし合い、狸使い、狸憑き、狸医者、狸を祀る祠などを題ごとに分け、郡村名や人名を挙げて、明治・大正の狸憑きの実話やお六つ大明神の信仰の様子も記す。後半に余材追録と、著者が萬福寺で狸に憑かれる人や住職と問答した記録を置き、巻末の「阿波名狸録」で名のある狸を徳島市と各郡の部に分けて並べる。