無人の駐車場から響く運動会の歓声
どんな伝承か
物書きになる前、著者は岩手県久慈市にあるアレン短大で日本文学と国語表現法の講座を受け持っていた。ある日、学生に作文を書かせながら教室を見回っていると、窓の外がやたらと騒がしい。教室は二階にあり、窓の外は広い駐車場である。そこで大勢の子供たちが元気に笑い声を上げていた。窓を開けて確かめると駐車場には誰もおらず、笑い声もぴたりと止んでいた。窓を閉めると二、三分もしないうちにまた歓声が上がり、花火を上げる音や拍手、声援まではっきり聞こえた。付属の小中学校の運動会かと思い学生に話しかけたが、学生たちは何の音も聞こえない、運動会も行われていないと言う。その間も著者の耳には子供の声が渦巻いていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
黄昏綺譚(高橋克彦・幽霊・怪異体験・1996年(平成8年))
『黄昏綺譚』は、高橋克彦が連載をまとめ、一九九六年七月付のあとがきを付したエッセイ集で、吉田光彦の挿絵と組んだ画文集である。著者が体験し見聞きした分身や生霊、寺での怪異、前世、UFOなどの不思議と、史料や神話に残る怪異、宮澤賢治をゴッホの生まれ変わりとみる考えを語る。「この世に幽霊はいる」「不思議な話が史料や神話に」「宮澤賢治はゴッホの生まれ変わり!!!」の三部に分かれ、巻末にあとがきと丸尾末広の解説「黄昏るペン」を収める。