馬車から落ちた娘と期日を切った診断
どんな伝承か
ベルツは狐憑きを「軽度の精神障害の一種」とみなし、憑かれていると思い込むこと自体が思慮を麻痺させて症状を招くと論じた。西欧の魔女狩りを引き合いに出し、信仰は病の伝染を助けるとまで言い切っている。一方で往診の場では民間の療法を頭ごなしに否定しなかった。馬車から落ちて激しく驚き、翌日には震えとうわ言に襲われた未婚の女性を診たとき、驚愕による思慮麻痺症と診断し、二日で治ると期日を切って約束する。二日後に行くと女は回復していた。家では老いた巫女が読経と秘法を行っていたが、ベルツは信を得れば誰でも同じ効き目を出せるはずだと述べている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幻視する近代空間 ―迷信・病気・座敷牢、あるいは歴史の記憶(川村邦光・現代(近代史研究))
民俗学者・川村邦光が、近代日本が在来の習俗や憑きもの信仰をいかに〈迷信〉として再編し、狐憑きを脳病・神経病・憑依妄想へ病理化したかを、具体的事件・事例に即して論じた近代史。