鳥っ子と名乗る岩木山の巫女
どんな伝承か
著者はあとがきに、津軽の岩木山麓にはお堂を建てて暮らしている巫女が幾人かいると記す。著者自身、ひと夏あるお堂に厄介になったことがあり、巫女に付き従って岩木山を駆けることもあったが、自分のような者には修行どころではなくひどく疲れるだけであったという。巫女から聞いた話はほとんど忘れてしまったが、「わたしは鳥っ子と同じだはんで、どこさでも飛んでいく」という言葉だけは妙に覚えていると書く。夕日がさして瞬く間に闇となる山中は、ただただ満天の星月夜である。柳田国男が『山の人生』で追った「山に入る」人が今なお跡を断たない事実に、著者は驚きを覚えると述べる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幻視する近代空間 ―迷信・病気・座敷牢、あるいは歴史の記憶(川村邦光・1989年(平成元年))
『幻視する近代空間 ―迷信・病気・座敷牢、あるいは歴史の記憶』は、川村邦光が一九八九年に著した近代日本の民衆の心性をめぐる論考である。明治の「血税一揆」の流言、トラホームと〈迷信〉、狐憑きと精神医学、「脳病」「神経病」、座敷牢と精神病者監護法、芦原将軍や出口なおの神がかり、祖先教と靖国の霊魂の管理を、新聞記事や医学書、調査報告から読み解く。はじめにの後に三部と終章「近代日本と霊魂の行方」を置き、あとがきで結ぶ。