段の坂茶屋の強盗撃退
どんな伝承か
明治十六年、三島通庸による道路開削の工事で土工が大勢入り込んでいたころ、段の坂の茶屋はおきそ婆やが一人で営んでいた。田島まで二里、若松まで十里の道のりで、大川に臨む景色のよい場所にあり、上り下りの旅人が憩う茶屋として賑わっていた。ある日の夕方、土方風の若い男が一晩泊めてくれと頼み、宿屋はやっていないと断られると居直り、金を出せと脅した。婆やは機転を利かせ、段の下に金子を囲ってあるから取って来るまで待てと言い置いて坂を下り、そのまま裏道を抜けて村役場へ急報した。役場は若者四、五人を選んで茶屋を取り囲み、棒と縄で男を縛りあげて警邏所へ突き出したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
下郷町史 第5巻(民俗編)――伝説(下郷町(編)・下郷町史)
『下郷町史 第5巻(民俗編)――伝説』は、会津の下郷町の町史民俗編のうち、町内の伝説を集めた第二節である。鏡沼の大蛇や二岐山のダイタンボウ、狼に食われた祖母、湯野上温泉猿湯の由来、高倉宮以仁王と桜木姫・紅梅御前の落人伝説、伊達政宗の戦の悲話、小野の長者と小野観音の金の鰐口などを収める。伝説を自然伝説・歴史伝説・信仰伝説に分け、各話に地名や供養塔・墓・文化財の現状を書き添えている。