つつじヶ岡の茶屋に集う女たち
どんな伝承か
仙台城下のつつじヶ岡は桜見物でにぎわっていた。梅林の茶屋で渡辺屋万之助という男が客を招き、花見の宴を持った。客たちを送り出してから、万之助は気疲れと酒の疲れでうとうとしはじめた。ふと見ると座敷の客は顔ぶれが変わり、女ばかり数人になっている。武家の妻女もいれば商家の女房もいた。花見に来たことなどないと語り合い、武家の妻などつまらぬものだと言い、そろそろ帰りましょうか、残してきた子供の顔も忘れて花に見とれましたと話す。女たちは立ちかけるとともに姿が消えた。江戸の末の話である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
東北怪談の旅(山田野理夫・1974年(昭和49年))
『東北怪談の旅』は、山田野理夫が昭和四十九年に編んだ東北地方の怪談集である。青森・秋田・岩手・宮城・山形・福島の六県に伝わる妖怪や幽霊の話、飢饉と間引にまつわる話、江戸時代の奇談などを、一番から一六三番までの短い話として収める。各話の末尾に県名を記し、恐山や飢饉の記録にふれて東北の怪談と怨念を結びつけるまえがきと、怪談観や霊能者をめぐる回想を記したあとがきを付す。