鶏が消え天井から血が垂れる古屋敷
どんな伝承か
名古屋西区俵町一丁目、俵小学校の前に広々とした邸宅がある。石門を潜ると樹木がうっそうと生い繁って昼なお暗く、陰惨な気の漂う古い構えで、十数年前から妖怪変化が出没するとの噂が立った。当時ここに住んでいた騎兵連隊長の某少佐は養鶏を好み多くの鶏を飼っていたが、犬猫の入った形跡もないのに知らぬ間に数が減っていく。近所の勧めで裏の林に小さな祠を建てて祈禱をすると、以来鶏は減らなくなった。少佐の転任後は借り手もなく、空家を試しに訪ねた者は、風もないのに襖や障子が倒れ、天井から生々しい血潮が垂れるのを見たという。
原典より
やがて何かしら気味の悪いものがポタリポタリと天井から垂れる。—— 迷信の諸相・宗教の真相(井上円了・1916年(大正5年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
迷信の諸相・宗教の真相(井上円了・1916年(大正5年))
『迷信の諸相・宗教の真相』は、井上円了が大正五年に刊行した『迷信と宗教』を、新しい題を付け現代の表記に改めて翻刻した本である。琉球・伊豆七島・壱岐対馬から北海道まで、著者が各地を巡回して見聞した犬神・人狐・河童・狐憑きなどの迷信と、怪火・天狗・幽霊・鬼門・卜筮・家相・禁厭など全国共通の迷信を挙げる。迷信の利害と原因を論じたのち宗教の真相を説き、余論に妖怪学の短編、附録に幽霊鬼神と霊魂不滅をめぐる論を収める。