故人の着物を逆さに振る祖谷の願ほどき
どんな伝承か
日本人は身にまとう衣服を、ただ寒さや傷害を防ぐ物とだけ見ていたのではなかった。四国の祖谷地方には、死者の願ほどきとして、故人が生前着ていた衣類を逆さにして振ってから谷川の流れで洗うという習俗がある。病人の加持祈禱にその着衣を本人のかわりとする例や、忌み明けののちに片身分けをする風習とあわせて考えれば、衣類が単なる物質ではなく、人間の魂の容れ物としてたいせつにされていたことがうかがえる。
原典より
死者の願ほどきには、生前着ていた衣類を逆さにして振ってから谷川の流れで洗う四国祖谷地方の習俗とか…—— 現代の迷信(今野圓輔・現代教養文庫・1961年(昭和36年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代の迷信(今野圓輔・現代教養文庫・1961年(昭和36年))
『現代の迷信』は、今野圓輔が昭和三十六年に著した、現代の俗信を一般の読者に向けて説いた読み物である。昭和三十年代の新聞・雑誌の報道や聞き書きを主な材料に、縁起かつぎ、前兆・占い・禁忌・まじない・願掛け、憑きもの落としの殺人や新興宗教の騒ぎまでを全国から拾い集めている。「現状」「過誤と真実」「その背景」「迷信論」の四部から成り、巻末に読者の問いに答える迷信身の上相談を付ける。