風穴にボタ餅を供える風の盆の祈り
どんな伝承か
富山県婦負郡山田村(現・富山市山田)では、九月中の二百十日は風の盆で、ボタ餅を風の穴に投げこんで強い風が吹かないようにと祈り、またボタ餅を食べた。著者は、二百十日前後は例年台風に見舞われるため全国各地で風祭りが行なわれ、その際に風を切るという意味で屋根などに鎌をくくりつける呪法がとられることを挙げ、それを防塞系呪術とする。これに対し本例は、風の根源とされる風穴にぼた餅を供えて風害から逃れようとするもので、祭祀系呪術の供物型の典型であるという。
原典より
九月中の二百十日は風の盆で、ボタ餅を風の穴に投げこんで強い風が吹かないようにと、ボタ餅を食べる。—— 厄除け――日本人の霊魂観(佐々木勝・民俗学・厄除け信仰・1988年(昭和63年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
厄除け――日本人の霊魂観(佐々木勝・民俗学・厄除け信仰・1988年(昭和63年))
『厄除け――日本人の霊魂観』は、佐々木勝が昭和六十三年に名著出版から刊行した民俗信仰の論考集である。鬼・悪魔・疱瘡神・一つ目小僧など人に災いをもたらす神霊を「厄神」と総称し、その来訪を防ぐ呪術と祀り上げる祭祀を、著者の民俗調査と国学院大学民俗学研究会の採訪記録などの事例から説く。禁忌と呪術、百鬼夜行と目籠、鬼の宿と笹神様、年神とミタマの飯、厄年と年祝い、正月行事と司祭者など八章からなり、うち四章は書き下ろしである。