糞を松と詠み替えた馬鹿婿
どんな伝承か
馬鹿婿が嫁の実家に呼ばれて蕎麦掻餅を馳走になった。あまり甘かったので、寝るときに椀に盛ってあるのをこっそり持ち出し、庭の土を掘って埋め、目印に糞をひっておいた。翌朝早く起きてみると、一晩のうちに雪が降り積もって目印は隠れていた。婿は、雪ふりてしるしの糞は見えにけり、と歌を詠んだ。台所にいた舅が聞き返したので、婿はとっさに、雪ふりてしるしの松は見えにけり、わがふる郷はどこくらん、と作り替えて詠み、馬鹿婿にもよいところがあると分かったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
農民俚譚(佐々木喜善(著)・本山桂川(編)・佐々木喜善・東北民俗・1934年(昭和9年))
『農民俚譚』は、佐々木喜善が書きためた昔話や伝説を、その没後に本山桂川が編んで昭和九年に刊行した本である。陸中の和賀郡・岩手郡・胆沢郡で集めた炭焼長者や瘤取爺などの昔話に、河童・山男・山女・人柱・蛇にまつわる伝説、地蔵の話、異類に嫁ぐ女の話を記した「縁女綺聞」、紫波郡の口碑による「鳥蟲木石伝」などを収める。郡ごとの昔話には大正十三年の日付の前書きが付き、巻末に本山桂川の追想「佐佐木喜善君の遺業と其晩年」を置く。