沢蟹が大蛇を退けた観音堂
どんな伝承か
長者の下婢が毎日米の磨ぎ汁を門口の沢蟹に与えていた。やがてその女のもとへ夜ごと素性の知れぬ美男が通い、床下から出入りしているとわかる。女は暇をもらって観音堂に七日七夜の願をかけた。七日目の夜半、男は大蛇と化して堂を巻き締め、扉を叩いて開けろと迫る。女が一心に拝み続けるうち、外で何かが闘う気配がして静まった。夜明けに村人が見ると、大蛇は鱗の隙間に無数の沢蟹を入られ、肉を噛み込まれて死んでおり、沢蟹も死んでいた。村人は蛇と蟹の塚を作って供養した。この話は南の浜にあったことだと語り伝えられている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。