千夜通う蛇男と麻畑の菌
どんな伝承か
ある里に老母と息子夫婦が住み、息子が奉公に出ている留守に、嫁のもとへ夜ごと素性の知れぬ美男が通った。嫁が千夜通えと言うと男は雨風の夜も欠かさず訪れ、九百九十九夜目に、明夜承知しなければ命はないと言い残した。姑の教えで菊酒を飲ませると男は正体を現し、見るも恐ろしい大蛇であった。嫁は長刀で斬り殺し、屍は荷にして七駄あった。その連れ合いの女蛇が夜ごと家の周囲を唸り歩き、斬り合いの末に山深い沼へ逃げ込む。嫁は沼のほとりで、裏の麻畑に菌となって生え皆殺しにするという密談を盗み聞き、教わったとおり取り尽くして食べ、蛇は死んで浮かんだ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。