拾わぬ金の争いと油売
どんな伝承か
三人連れで伊勢詣りに出た者たちが、道々もし金を三十両拾ったらどう分けるかで言い争いになった。三人で十両ずつ分けようと言う者、一番先に見つけた者が多く取るべきだと言う者、鹿撃ちでも初矢を当てた者が頭を取るのだからと譲らぬ者があり、とうとう喧嘩になった。そこへ油売りが通りかかり、話を聞いて油売る道具を路傍に下ろし、まずその金をここへ出せと言って取っ組み合う間を掻いくぐって裁きを入れた。ところがその拍子に油壺がひっくり返り、油はすっかりこぼれてしまった。拾ってもいない金の争いで、ただ損をしたのは油売りばかりであった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。