馬でも鹿でもない獣
どんな伝承か
性の悪い馬がいた。野原で草を食い飽きて眠っているうちに、仲間の馬たちが今のうちに悪戯をしてやろうと相談し、耳をすっかり切り落としてしまった。目を覚ました馬が仲間のところへ行くと、今まで馬だとばかり思っていたのに耳がないではないか、それでは鹿だと言って除け者にされた。仕方なく山を越えて鹿の仲間へ行くと、角がないのだから仲間ではないと言われる。ある山の山ノ神の樹の下で泣いていると、山ノ神が哀れんで鬣と角を生やしてくれた。しかし結局は馬でもなく鹿でもないので、獣仲間からは馬鹿と呼ばれた。これが馬鹿の始まりである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。