身の毛で機を織る鴻の女房
どんな伝承か
山中の孤屋に貧しい男が住んでいた。大風の翌朝、助けてくれという声を尋ねて行くと、倒れた古木の間に鴻の鳥が挟まれていたので、木を伐って助け出してやった。雨上がりの日、山で柴を採る見知らぬ美しい女に出会い、女は男の家に居ついて、紙縒りから米を二粒ずつ出しては鍋一杯に増やして暮らしを立て、機を織った。女の子が生まれ、三年目に織り上げた布は町の大店に三百両で買われ、暮らしは豊かになった。やがて女は暇を乞い、自分はいつぞや助けられた鴻の鳥で、機は身の毛をみな抜いて織ったのだと明かし、赤裸の身で残る風切羽で山へ飛び去った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。