岩窟の女と歳月を隔てた帰郷
どんな伝承か
貧しい男が歳の暮に金の当てもなく道を行くと、金の欲しい者はこの道を真直ぐに来いという立札があった。辿って行くと大きな岩窟があり、奥の赤い障子から美しい女が出て来て男を招き入れ、酒肴でもてなした。男は三日ほど遊んでいたが、家の妻子を思い出して帰ると言うと、女は一度出れば二度と来られないと嘆き、望むだけの黄金を与えた。村へ帰ると様子はすっかり変わり、婆に尋ねると曾祖母の代に行方知れずになった人だという。教えられた古墓の草をむしっていると棒杭から水が出て、冷たいと思ったところで目が覚めた。長い夢であった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。