十五夜の豆と猿になった長者
どんな伝承か
或る所に長者があり、その隣に大層貧しい家があった。八月十五夜の晩、月に供える団子の米もない貧家の者が長者に米を借りに行くと、長者はさんざんに悪口を言って笑い、月には馬の糞でも拾って供えろと言って追い返した。貧しい者は困り果て、他人の畠から豆を少し盗んで月に供えた。翌朝、隣の長者の家からクワエンヒ、クワエンヒと啼く声がするので行ってみると、旦那をはじめ家中の者がみな猿になっていた。貧しい者はそれを追い払って長者となったという。この行いから、十五夜の神に供える豆は人の物を盗んでも神が許すと伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。