伊勢に詣でて人となった飼猫
どんな伝承か
或る所に正直だが貧しい百姓がいて、四十を越しても独り身であった。隣の長者は極道者で、飼っていた牝猫さえ余計な口だと言って外へ投げ捨てた。夜半に猫の啼き声を聞いた百姓は寒さを堪えて起き、猫を家に入れて自分と同じ物を分け与えて可愛がった。或る夜、人であったら留守に麦粉でも挽いてくれように、と言って寝たところ、翌日戻ると猫が挽臼を挽いていた。やがて猫は人間になりたいと言って伊勢へ詣で、神の功徳で人の姿になって帰り、百姓と夫婦になってよく働き、隣の長者にまさる長者となったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。