七尋三尺の髪の娘と猿楽峠
どんな伝承か
閉伊郡の宮古浜、長崎のシタミョウという家の娘が、三月三日の潮干に出たまま帰らなかった。家では葬式を済ませて弔っていたが、三年目の同じ日に娘は懐妊して戻り、父の名を語らぬまま女児を産んだ。その子は生まれつき髪が八寸も伸び、十七八の娘になると七尋三尺に達した。京では帝が右近の桜に長い髪が三本懸かるのを見て、安部晴行に占わせ、女を探させた。東国を巡った猿楽の一組が閉伊郡、山田の港に近い小山田の里の峠で、女だけを集めて猿楽を催し、髪を桐の箱に負って来た娘を見つけて京へ連れ去った。娘は土地でウンナンという海女神に祀られ、その峠は今の猿楽峠だと伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。