旅人の秘事と駒形神の起こり
どんな伝承か
遠野郷綾織村の駒形神の由来はこうである。五月の田植のころ、村の女たちが田植をしていると、目も鼻も口もない子供に赤い頭巾をかぶせて背負った旅人が通りかかった。女たちが驚いて手を止めて見送ると、旅人は引き返して来て、これは子供ではなく自分の品物であり、こういう物を持って生まれたために生涯妻を知らぬのだと言い、帯を解いて見せた。女たちは声も出なかった。旅人は長くこの村に留まり、今のお駒様の所で死んだ。生前、自分のように妻を持てぬ者を助けてやると言っていたので、村人が神として祀ったのだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。