祭礼に急いだあわて者
どんな伝承か
あわて者の男が、明日は彦神様の祭礼だから人より先に参詣して御利生を授かろうと、宵から支度をして寝た。夜明けに妻に起こされ、鴉が鳴くのに慌てて家を出た。明るくなると行き交う人が皆笑うので自分の姿を見ると、妻の着物を裏返しに着ており、片足は雪沓、片足は草鞋であった。今さら帰れず社に着き、誰より先だと素早く拝んで引き返す。帰りに酒を飲もうと懐を探ると酒代がなく初穂だけが残り、弁当と思った包みは妻のおまるであった。腹を立てて帰り、川辺の洗濯の女を妻と思って殴ると隣家の者で、慌てて詫びた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。