処刑の刻に血潮を飛ばした黒仏
どんな伝承か
奥州に行われる秘事念仏宗の最至尊の本尊は黒仏と呼ばれ、六七寸ほどの腰の細い跪坐の真っ黒な姿である。この宗門が邪法として法度禁制され、宝暦十年五月二十五日、智識と御脇の者たちが仙台の町外れ七木田の処刑場で磔にされた。そのとき故郷の水沢横町にある山崎杢左衛門の家の奥座敷では、一族の信徒がひそかに寄り集まり、雨戸を締め切って蠟燭を灯し、本尊の前で皆が拝んでいた。夕方、その蠟燭の火がぱっと消えたので、今しがた主人たちが処刑されたのかと皆泣き沈んだ。再び火を点けてみると、本尊の脇の下から胸にかけて、さっと血潮が飛び散っていた。まさにその時刻に杢左衛門らは突き殺されたのだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。