夢を語らぬ童と鬼の生針
どんな伝承か
ある家の子が毎朝よい夢を見たと繰り返すばかりで、どんな夢かと母に聞かれても話さないので、馬鹿になったと舟に乗せて流された。沖で鬼どもが子を食おうと海の水を飲み干しはじめ、舟が鬼の国へ引き寄せられると、子は自分の睾丸を叩いて囃した。鬼どもは笑って水を吐き出し、舟は沖へ押し戻された。二度目も同じで、鬼どもは夢の話を聞かせれば宝をやると言い、子が話すと、水の上を歩ける浮靴と死んだ物を生き返らせる生針をくれた。陸に上がった子は死んだ馬を生針で生き返らせ、その馬で行った先の長者の家で急死した一人娘も蘇らせて、娘の婿養子に迎えられたという。
原典より
その宝物は水の上を渡る浮靴と、死んだ物を甦かす生針であった。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。