如意の珠を持つ十六肢の白鹿
どんな伝承か
狩人の鶴がある時、片羽山の深沢の沼のほとりで狩をしていて、大きな十六肢の白い鹿を射止めた。皮を剥ごうとすると、片側を剥げばもう片側が元のように癒着き、ついに鹿は蘇って走り出した。鶴はそれを追い、今の死助権現の嶺まで追いかけて来て、とうとう射止めた。その鹿の眼玉は如意の珠というものであった。手に取ると忽ちそこに葦毛の駒が現れたので、その背に乗って家に帰り、下りるとまた駒は山の方へ駆けて見えなくなった。鶴はそれからマタギのことは何でも意のままになったという。この珠は代々この家の宝物であったが、火事のときどこかへ飛んで行ってしまい、それからは家運も昔日のようでないと村人は語る。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。