愛馬に縋って死んだ娘
どんな伝承か
昭和二年頃の話であるらしい。山形県北村山郡東郷村のある部落の貧しい百姓の家に、一人の美しい娘があった。父親は馬車輓が家業で毎日外へ出て稼いでおり、家にいる継母に虐待されるのに娘は堪えかねて、昼間は野山に行って日を暮らし、夜は厩に行って、唯一の話し相手である葦毛の駒に自分の苦しみを打ち明けていた。どんなことがあったのか、娘は二親が寝静まった時刻を見計らって厩に行き、愛馬の首にしっかりと縋りついたまま、奇態なありさまで死んでいた。その馬も同時に一声高くいななき斃れた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。