ひとりでに動く関山の柱時計
どんな伝承か
明治二十五年九月、山形県北村山郡高崎村大字関山の東海森左衛門方に怪事が続出した。当時の山形日報の報じるところによれば、白昼、人もいないのに柱の時計がひとりでに下りてきて畳の上に転がり、また自ずと上がって柱に掛かる。あるときは食器や皿や鉢が飄々と天井を上下し、戸棚や鍋の中の食べ物、桶や庫の中の物が消え失せるので、家人をはじめ周囲の人々は肝をつぶした。井上円了は人為を疑い、同家にいた年少の盲人を医師の家に預けたところ、怪事はそれきり止んだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編)
『井上円了 妖怪学講義』は、明治期に哲学館で講じられた井上円了の『妖怪学講義』から要所を選び、平野威馬雄が現代の文章に改めて編んだ抄録である。狐憑きや化物屋敷、怪火、幽霊、コックリなどを題材に、円了が古書から抜き出した記事、各地から寄せられた報告、円了自身の現地での調べを収める。原著の八部門のうち理学・心理学・宗教学・雑の四部門を章に立て、序で研究の経緯と分類を、結びで編者の見方を述べる。