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鍵をかけた戸棚から饅頭が消える家

所在地和歌山県和歌山市松島
年代明治二十三年冬
登場野中某・精神病の少女
出典井上円了 妖怪学講義

どんな伝承か

明治二十三年の冬ごろ、和歌山県海草郡四ヶ郷村大字松島の野中某の家で怪事が続いた。昼夜を問わず、飯を炊こうとすると釜に灰が投げ込まれ、食事の残りはすっかり食べ尽くされ、井戸には石炭油などが投げ入れられ、鍋や釜や桶が便所へ運ばれ、主人が寝床の下に隠した財布が便所に捨てられていた。近所の者が試しに饅頭を戸棚に入れて鍵をかけておくと、いつの間にか食べ尽くされていて、狸の仕業ではと噂された。様子を見に来た人の頭に灰が降ってきて逃げ帰ることもあったが、やがてその家の精神を病んだ少女の仕業だったと分かったという。

原典より

そこで近所の者が、よし、我々が試してみようと言って、饅頭を戸だなの中にかくしておき、その戸にカギをかけ密閉しておくと、いつの間にか饅頭がそっくり食いつくされていた。—— 井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編) より引用
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※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません

出典の文献について

井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編)

『井上円了 妖怪学講義』は、明治期に哲学館で講じられた井上円了の『妖怪学講義』から要所を選び、平野威馬雄が現代の文章に改めて編んだ抄録である。狐憑きや化物屋敷、怪火、幽霊、コックリなどを題材に、円了が古書から抜き出した記事、各地から寄せられた報告、円了自身の現地での調べを収める。原著の八部門のうち理学・心理学・宗教学・雑の四部門を章に立て、序で研究の経緯と分類を、結びで編者の見方を述べる。

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