印旛沼の舟に乗り込むカワボタル
どんな伝承か
『利根川図誌』によれば、印旛沼にはカワボタルと呼ばれる怪火が出て、俗に亡者の陰火といわれた。丸くて蹴鞠ほどの大きさ、蛍のような色に光り、夏から秋の夜、とくに雨の晩に水面すれすれをいくつも漂い、集まっては散り、矢のように走る。ある五月、吉高の義和が友人と沼へ夜釣りに出ると、にわかに風雨となって闇に包まれ、遠くの水中から青い火が燃え上がって近づき、舟の舳先に乗ってきた。義和は声も出せず念仏を唱え続け、やがて火は消えた。漁師たちは、打ちたたくと砕けて舟一面が青く光り、油のようにぬめって生臭かったと語ったという。
原典より
印旛沼にカワボタルというものがあり、俗に亡者の陰火だという。—— 佐倉市史 民俗編――伝説・怪異(佐倉市(編)・佐倉市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐倉市史 民俗編――伝説・怪異(佐倉市(編)・佐倉市史)
『佐倉市史 民俗編――伝説・怪異』は、千葉県佐倉市の市史の民俗編のうち、第七章「民俗知識」と第八章「口承文芸」の伝説の節である。市内で採録した吉凶の予兆やまじない、民間薬、天気の言い伝えと、狐や狸の化かし、デーダラボーの足跡、岩富の首なし塚、天狗、狐火、印旛沼のカワボタルなどの伝説を収める。伝説は文化財保護委員会の分類に倣って自然伝説・歴史的伝説・信仰伝説に分け、終わりに村々の禁忌を置く。