犬神やキツネに憑かれた人びと
どんな伝承か
日本でもキツネや犬神に憑かれた人は正気を失い、一時的に心を乱すと信じられてきた。高知県のある漁村では、犬神が憑くとその者は憑いた相手そっくりの口ぶりになり、餅が食べたいと口走ったり、にわかに暴れ出したりするという。精神医学ではこうした状態を祈禱性精神病と呼ぶ。幡多郡の漁村のある集落で、憑かれた経験を持つ二十人を調べると、男性は三人だけで残る十七人は女性だった。同じ郡の農村では、肋膜炎や肺炎、中耳炎、婦人病など二十余りの病が、死霊や生霊を含む憑きものの仕業とされていた。
原典より
たとえば、高知県のある漁村では、犬神に憑かれると、憑いた人と同じような物の言い方になり、狂乱状態で、「モチが食べたい」といったり、急にあばれたりするという。—— 呪術――その現代に生きる機能(吉田禎吾・吉田禎吾・社会人類学・1970年(昭和45年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
呪術――その現代に生きる機能(吉田禎吾・吉田禎吾・社会人類学・1970年(昭和45年))
『呪術――その現代に生きる機能』は、吉田禎吾が一九七〇年に著した文化人類学の概説書である。日本の雨乞いや迷信、山陰のキツネ持ち・四国の犬神筋といった憑きものの家筋から、アフリカの妖術・邪術、インドネシアの祈禱師まで、各地の呪術を取り上げる。日常生活の中の呪術から呪術の論理と現代まで七章で構成し、呪術が不安をやわらげ社会の秩序を保つ働きを持つことを論じる。