虚無僧を弔う並木小路の五輪塔
どんな伝承か
昔、吉郎兵衛という豪胆な人がいた。ある時、一人の虚無僧がやって来て尺八を吹き立てるので通れと言ったところ、づかづかと上がり込んで座敷へ通った。あまりの無礼に腹を立てた吉郎兵衛は、長押にかかっていた槍を取って虚無僧を突き殺してしまった。ところがこの虚無僧が上田の殿様の子だと分かったので、吉郎兵衛はただちに自首した。しかし殿様は、吉郎兵衛に討たれるような子は持たぬと言って咎めなかった。罪に問われずにすんだ吉郎兵衛は供養のため五輪塔を建て、大日如来として祀った。金井の往還路から並木小路へ入った右手の三角の空地に、その五輪塔が残るという。
原典より
すると殿様は「吉郎兵衛に討たれるような子は持たぬ」と仰言っておとがめがなかった。—— 坂城町誌 上巻(民俗編)――伝説(坂城町(編)・坂城町誌) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
坂城町誌 上巻(民俗編)――伝説(坂城町(編)・坂城町誌)
『坂城町誌 上巻(民俗編)――伝説』は、長野県坂城町の町誌上巻(自然編・民俗編)から、民俗編の数章を抜き出したものである。祟る所や神罰、ヒトダマ・狐火などの怪異、魔除け、植物の禁忌といった俗信を地区ごとの事例として番号を付けて並べ、続いて甘利さま、天田長者とほうず池、苅屋原の七不思議、貉和尚、夜泣き石など三十余りの伝説を収める。伝説の章は調査員の調査をもとに、以前の調査記録も二、三篇併せて載せる。