京都藪田家の投石とお品
どんな伝承か
京都市上京区元六十六組北町の織物職、藪田喜七郎方で、ある夜十一時ごろ、にわかに小石が降ってきた。毎夜同じ時刻に降ってくるが、投げている者は見当たらない。天狗か狐か狸の仕業かと近所で話題になり、警官が出張して取り調べた。疑わしいのは同家の雇女お品で、その時刻に姿が見えなくなることがある。後をつけると、女はほど近い竹藪の中に入り小石を拾っては投げはじめた。捕らえて調べると、お品は丹波国南桑田郡吉川村の菊島市松の妹で、二年前から雇われていた。同家に寄留した荒木常太郎と通じたのを主人に嗅ぎつけられ小言を言われた恨みから、行水中の主人に石を投げ、狐狸の悪戯とされたのに乗じて毎夜投げ続けたと白状した。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
妖怪の民俗学――日本の見えない空間(宮田登・宮田登・民俗学・1985年(昭和60年))
『妖怪の民俗学――日本の見えない空間』は、宮田登が一九八五年(昭和六十年)に著した、妖怪の現れる場所を論じた民俗学の書である。柳田国男と井上円了の妖怪論、幽霊と妖怪の違い、口裂け女と産女、皿屋敷、化物屋敷と下女、辻・橋・境の怪異、怪光と怪音、七不思議、通り悪魔と髪切りを、古文献や新聞記事、各地の伝承から読み解く。四章から成り、都市の空間に妖怪が現れる仕組みを軸に据える。